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ステロイドは万能薬ではないというお話

「できるだけステロイドは塗らないようにしています。」という方は多いのではないでしょうか?

私がアトピー治療で有名なとある病院で働いていた際のお話です。

※院長の秘書としてカルテの作成や患者さんへの説明を担当しておりました。

それは、60代半ばくらいの男性の患者さんの診察のときのこと。

私は診察室の院長の横で、先生の診察中の言葉を聞き取りカルテに指示を記載していました。

院長先生はとても早く口で、お世辞にも滑舌がいいとはいえなかったので聞き取るのに必死でずっとカルテに向かっていたところ。。。。

「おっちゃん!あかん!体にカビがはえてるで!いったいどんな治療してたんや!」

と院長の叫び声!

恐る恐る目線を患者さんに向けると、皮膚の色が普通ではない男性の姿。

患者さんがいうには、最初にかかった近所の皮膚科で一年間通院するも、最強クラスのステロイドを使ってもどんどん悪化。

ついに、主治医の先生がお手上げ状態になり、大学病院を紹介されたとのこと。

転院した先でも、ステロイドが処方され治療が始まったものの、効果がみられず抗生剤の追加投与がはじまったそうです。

抗生物質の併用がはじまっても、短期間には効果がみられず、次々と違う種類の抗生物質へと切り替わっていったそうです。

そしてついには、抗生物質に耐性をもってしまったようで、一般的な抗生物質ほぼすべて試したにも関わらず症状が軽快することもなく、最後の砦として駈け込まれとのことでした。

この患者さんは、体の免疫を高める内科的な治療と最適な抗生剤や抗真菌剤の組み合わせなど基本的な治療方針をきめるための入院指示となりました。

その後、使うべき薬が見つかり通院での治療に切り替わり笑顔で退院されていきました。

 

ステロイドは使用目的を間違うと悪化を招く

現状と違う症状の治療で処方されたステロイドは、自己判断で再利用せず医師の診断を受けてから使用しましょう。

数日使用しても効果が見られないときも速やかに医師に再度相談しましょう。

「スキンケアをしていても、どんどん悪化して仕方なくステロイドを使いました。」という方からのご相談を数多くいただきます。

医師の診察を受けて今の状態に塗るようにと処方されたステロイドではなく、以前に処方されて使い切らずに残っていたステロイドを再発や悪化したときに使っていますという方が多いようです。

ステロイドは、肌本来の免疫機能を抑えることで炎症やかゆみを軽減してくれますが、同時にバイ菌やウィルスをやっつけようとする免疫の働きも抑えてしまいます

そのため、その症状が黄色ブドウ球菌や真菌が増えてしまっている場合は、強いステロイドを使うと菌をやっつけようとする肌本来の働きも抑え込んでしまうので、症状の急激な悪化をまねいてしまうことがあります。

トビヒやカポジといったジクジクした状態や、小さなお子様に多い水イボやヘルペスも注意が必要な症状のひとつです。

こういった状態には、抗生物質や抗真菌剤など症状に必要な成分とステロイドを一緒につかう必要や、場合によっては専用の抗ウィルウス剤が不可欠な場合があります。

お薬の自己判断での使用には、くれぐれもご注意ください。